LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability) 健康と持続可能な社会に配慮したライフスタイル)という言葉が生まれて早10年が過ぎました。もともとは健康や環境問題に関心の高い人々のライフスタイルを営利活動に結びつけるために生み出されたビジネス用語でしたが、それとは関係なく自身のライフスタイルを持ち、自然と共存し、シンプルな生き方をされている多くの人々が世界中におられます。それは地球温暖化を筆頭に近年とみに叫ばれる環境問題という政治問題に翻弄されず、身近な自分たちの生活の中でささやかにSustainableな生き方を実践されている人々に他なりません。

自分のホームページを作ろうと考えた時に、「これからどんな方向で仕事をしていくべきなのか」と自問しながら自分の仕事を振り返ってみました。意識していた訳ではありませんが、Architectures Of Health And Sustainability(健康と持続可能な社会に配慮した建築)に取り組んでいる自分がそこにありました。おそらくそれは私の育った環境、考え方、スタンス、ライフスタイルが、そのような建築観を私の中に自然と育んでくれていたのだと思います。私は迷うことなくこれからも自分自身がLOHASな生き方を実践する中でLOHASな建築(住まい)を作っていこうと思います。

私は子供の頃から地球儀を見たり、地図に示された山脈や平野や川、そしてそれらと町や村の関係を見るのが好きでした。小学校の授業で聞いた「将来きっと中国との関係が重要になる」とか、「日本が輸入している南洋の木は切っても直ぐに生えてくる」といった話はもう40年以上も前のことです。しかし「南洋の木は切っても直ぐに生えてくる」という話には嘘がありました。初めてそのことを疑問に思ったのは、1989年に工事中のGloria Chapelの現場に台湾の姉妹教会の方が何人か見学に来られた時でした。ちょうど外壁のコンクリート打ち放しの型枠を外す作業中で、私が上手く出来た仕上がりに気持ちよく説明をしていた時に、「この木(ベニヤ型枠)はこの後どうするんですか。」と一人の女性から質問を受けました。「この現場では特殊な寸法なので再利用出来ませんが、他の現場で再利用することになります。」と私は答えました。この時の彼女の表情から、自分たちの周りの国々で伐採され日本にやって来た、木材の運命を憂慮されていると察し言葉を続けることが出来なかったことを今でも鮮明に覚えています。他の現場で再利用するといっても、後3〜4回使われたら間違いなく廃棄物(ゴミ)となる日本の建設システムに思いを巡らし、とても恥ずかしい思いに駆られたものです。しかしこのことが地球環境と自然環境について考えるきっかけを私に与えてくれたと思っています。

私は出来るだけ自然の素材を使って設計するように努めています。そして無駄を削ぎ落とすことで生まれるシンプルで素朴な本物の建築の中にだけ生まれる、穏やかで心に優しい上質さを追い求めて行きたいと思っています。しかしこのような私の素材に対する考え方や設計姿勢などポジティブな部分とは別に、循環型建築やゴミの削減などへの取り組みも決して忘れてはならないと思っています。
これからも一つ一つ条件の異なった現実の仕事の中で、今までと変わらないスタンスで最良の方策を依頼者と一緒に考え解決して行ければと思っています。